彼の素顔は甘くて危険すぎる


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夕食後、ひまりの部屋でお茶をする2人。
両親は月末の提出書類があるといい、クリニックに戻って行った。

久しぶりに訪れたひまりの部屋を楽しむように、不破はイーゼルに飾られた絵を眺めている。

すっかりひまりとの交際も認めて貰っている不破は、両親に会うのも堂々としたもの。
アメリカの自宅に1カ月近く大事な娘を泊めおいた事実があることが、自信にも繋がったようで。
ひまりの両親と不破の両親は、2人の知らない所で連絡を取り合う仲になっていた。

「ひまり、これ、……何?」
「ん?……あ、それ入試に使うポートフォリオに添付する資料?みたいなもの」
「……え、どういうこと?」
「推薦枠で美大の入試を受けることになって、それに使うために先生から提出を求められたの」
「推薦で美大に行くってこと?」
「受かれば、ね。10月末に面接があるから、それに落ちたら一般枠で受けるつもりだけど」
「……なるほどな」

内申書の提出に伴って、経歴等と記載する書類に、これまでの受賞作品をカードサイズに纏めたものを添付するという担任のアイディア。
美大らしく、実力で勝ち取れというのが口癖で。
これまでの受賞作品を纏めたものを作成している。

不破くんと別れたくないし、フランスに留学しなくてもいいと分かり、気持ち的には美大一本に切り替えた。
とはいえ、推薦枠でもやっぱり不安で。
『絶対』は無いから、不合格になる恐れもある。

両親は余程のことがない限り不合格にはならないと言うが、そんなこと分からないじゃない。
その僅かな確率に入ったら、立ち直れない。
だから期待せずに、最初から全力で挑むことにしている。