彼の素顔は甘くて危険すぎる


(ひまり視点)

土曜日の19時半過ぎ。
ひまりの自宅に不破の姿がある。

小児科クリニックの診療時間終了後に、不破から契約に関する説明をするために。
いつもより少し早めにクリニックを締め、自宅のダイニングで食卓を囲む4人。

ひまりが用意した夕食を食べながら、スポンサー契約と絵師としての専属契約の概要を説明した上で、正式に両方とも契約する方向で話しが纏まった。

父親は娘の成長に感極まって、不破がいるというのに感涙するほど。
娘を溺愛しているのがよく分かる。

母親は現実派のため、契約料が幾らくらいになるのか。
画材提供はどれくらいの頻度でどれくらい提供されるのか、など詳細が気になるようで書類をしっかり確認している。

ひまりはと言うと……。

「え、ええええっ、えぇ~~っ!!それ本当にッ?!」
「ん、社長からの提案で決定したから」

不破から『1st アルバム』に既に採用が決定した旨を伝えると、物凄いテンションで喜んでいる。
こうもすんなり事が運ぶとは思ってなかったようだ。

「それから、この登録も併せてしなければならないんですけど」
「何だい、それは…?」
「不破くん、なーに、それ」
「これは、商標登録と言って、文字やマーク、ロゴなどを国に登録しておくことで独占的に使用する権利のことを言います。例えば、『SëI』という名前も登録済だし、俺のサインも登録済なので、複製したり無許可でしようすれば違法になるというわけです」
「商標登録か。うちの病院のロゴマークも登録しているよ」
「ですよね」
「絵に登録する必要あるの?」
「ひまりの場合は、落款の代わりにサインしてるだろ、左下に」
「あ、……ん」
「その文字を登録することで、権利が主張出来るというわけ」
「……そうなんだ」