「今最終段階に来ているが、1st アルバムの歌詞カードを依頼してみるか?」
「え、間に合いますか?もう無理かと思ってたんですけど」
「全ページは無理でも、既に提出して貰ってる作品も検討材料に入れたら、幾つかは使えるんじゃないか?」
「間に合うなら、是非っ!!」
「フッ、言うと思った」
社長の菅野は柔和な笑みで珈琲を口にした。
公式サイトに流す曲の背景のイメージ像として使用する予定で仕上げて貰った作品が数点ある。
それを歌詞カードにも使用すれば、もっと沢山の人の目に留まるのは必至。
「社長、こちらで宜しいでしょうか?」
「おっ、もう出来たか」
秘書の中田から受け取った契約書の他に、中田はもう一つの書類を差し出す。
「社長、契約に際して、こちらの登録も必要になりますが……」
「あぁそうだったそうだった」
不破も目にしたことがあるそれ。
契約した際に不破もこれを登録済みである。
アーティストにとって、作品の命と言っても過言じゃない登録証。
それをするのとしないのとでは、天と地ほどの差があるからだ。
「では、不破。これも橘さんに手渡してくれ。分からないことがあれば、ご自宅に説明に伺わせるし、事務所に来て貰っても構わないから」
「はい」
「それと契約後は、改めてスケジュールをすり合わせるから、都合のいい時に事務所に来るように伝えてくれ」
「はい」
「それと、担当者は誰にすべきか……」
「三木なら柔軟に対応出来るかと思いますが」
「ん、三木なら経験も豊富だしな。それに、不破が嫉妬せずに済むし」
「……聞こえてます」
「フッ、わざと聞こえるように言ってるんだ」
40代のベテラン編集担当の三木千景。
他のアーティストや俳優のグッズも多く手掛ける実力を兼ね備えたキャリアウーマンだ。



