数日後の放課後。
ひまりが歯科の定期検診があるというので、その日に事務所がある本社を訪れた。
事前に山本さんを通して向かう旨を話しておいたこともあり、直ぐに社長室に通された。
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「…――…という流れになりまして」
「凄いな、まだ高校生なのに」
「社長、『SëI』も高校生ですよ?」
「フッ、そうだったそうだった」
ひまりにフランスの画材メーカーからスポンサー契約の申し出があった話をした上で、新素材の開発に伴う事業協力の説明もした。
俺が『SëI』というアーティストとして活動している事も伝えた上で、うちの事務所と絵師として専属契約しているという話をアーロンにしたからだ。
契約上、被る内容があったら困るし、そもそもひまりと先に契約をしているのは俺の方だから、妥協するなら向こうが一歩下がって欲しいという方向性を示す為に。
「では、橘さんとは絵師としての専属契約を正式に結ぶということで進めていいんだな?」
「はい」
「中田(秘書)、契約書の準備を頼む」
「承知しました」
ひまりとは話がついている。
バイト感覚で絵師として既に数枚の絵を採用していている。
とはいえ、表立った作品ではなく、あくまでも曲作りのための材料として。
だからこれを機に、正式に契約した上で、彼女の才能を全面的にバックアップするつもり。
それは俺にとってもまたとないチャンスでもあるから。
これまでのCDのジャケットは、絵ではなく全て写真を加工したものを使用している。
背景として、風景だったり物だったり。
その上に歌詞やクレジットを記載して来た。
今後はそれに『絵』を採用することが出来るということ。
イメージした虚空の世界を表現できるというのは、アーティストにとって大きなメリットだ。



