2杯目のアイス珈琲をオーダーして、気を落ち着かせる。
「どうしているの?」
「1人にしておけないだろ」
「子供じゃないのに……」
「そういう問題じゃない」
アーロンが翻訳機に向かって何かを話している間、俺はひまりに耳打ちした。
すると、アーロンが翻訳機に表示されたものを俺に見せる。
『彼女には、画材の新素材の開発に協力して貰いたくてお願いしている所です』と。
その後も翻訳機を返してやり取りが行われ、ひまりを口説きに来たわけじゃないから安心して欲しいと。
留学を提案したのは、あくまでも必要であれば全面的にバックアップするという事であって。
別に画材提供の交換条件ではないという。
むしろ、新素材の開発を手伝って貰いたいから、画材提供は是非させて欲しいという。
そういうことか。
杞憂だったのかもしれないが、可能性はゼロじゃない。
完全に安堵したわけではない俺は、さっきの視線や態度に関して尋ねると。
俺が彼氏なんだとすぐに分かり、ひまりに話した上で俺を揶揄ったらしい。
なるほどな。
わざと嫉妬させようとしたってことか。
隣りに座るひまりに視線を向けると、彼女は不安そうな表情を覗かせていた。
そんな彼女の頭に手を乗せ、ポンポンと叩く。
……分かったから、怯えるな。
都内に画材メーカーの東京支社があるらしく、今後はそこを通して画材の提供や新素材の開発に伴う研究が進められるという。
婚約者をライバル社の御曹司に奪われたという話を、ひまりの両親には話したくなかったらしい。
だから、先日の話し合いの際には開発の件に触れなかったという。
男のプライドがそうさせたということか。



