(不破視点)
ピアノを弾く手を止め、彼女にLINEを送ったが、返信が来ない。
ブチ切れ寸前の俺は怒りを抑える為に、氷が解けて薄くなったアイス珈琲をがぶ飲みした。
すると、画材メーカーの社長が俺を手招きしている。
宣戦布告か?
ひまりは気付いて無いようだったが、画材メーカーの社長は何度も俺と視線が合っていた。
しかも、薄笑いをしながら、チラチラと。
敵意剥き出しの視線を向けてたから、分かりそうなものだ。
俺が彼氏なんだと。
煮えくり返りそうな感情をグッと押し殺し、ひまりがいるテーブルへと歩み寄ると。
「ハジメマシテ、Aaron Camille デス」
「Ravi de vous rencontrer, je suis Fuwa.(訳:初めまして、不破です)」
「Parles-tu français?(訳:フランス語が話せるの?)」
「Non je ne peux pas parler.(訳:話せない)」
「フフフッ」
簡単な日常会話が話せる程度。
両親がロサンゼルスに会社を立ち上げるまでは、フランスに住んでいた。
元々、ロサンゼルス育ちの母親がフランスに留学していて、同じ時期に父親もフランスに留学していた。
二人は恋に落ち、結婚して俺が生まれた。
そして、母親の故郷でもあるロサンゼルスに生活拠点を移した。
フランス語を話す俺に驚いたひまりは、あんぐりと口を開けて俺を見ている。
「あとでお仕置きするから、覚悟しとけよ」
「なっ……」
俺はクールな表情で手を差し出し、握手を求めた。



