(不破視点)
「ひまり」
「……ん?」
「絶対、気抜くなよ?」
「……うん」
「ここも、ここも、ここも、ここも……絶対触らせるんじゃねぇぞ?」
「っ……、うん」
ひまりの手、肩、腰、唇に指を這わせて警告する。
スポンサー契約を申し出た老舗画材メーカーの若社長というやつをネットで調べたら、かなりのやり手だという事が分かった。
イケメンな上、実績もあり、自身も芸術大学を卒業している筋金入り。
その上、絵画だけでなく彫刻や建造物も手掛けているとか。
今、新進気鋭の敏腕御曹司として有名な奴らしい。
そんな奴が、幾らひまりの絵に興味があるからといっても、初対面で手にキスするって、やりすぎだろう。
そりゃあ、海外じゃキスくらい挨拶代わりにするだろうが、まだ高校生のひまり相手に、しかも親が同席しているその場でしたって、完全に勘違い野郎としか思えない。
フランスに呼び寄せて育てたいだと?
ひまりを自分の女にでもするつもりじゃねぇよな?
わざわざ日本の、しかも高校生相手に画材提供って、普通じゃ考えられない。
俺の中のどす黒い感情が煮えたぎっているのが分かる。
最近、ますます綺麗になって来たひまり。
彼氏だから贔屓目で見てるとしても、かなり色気も出て来てるのが分かる。
そんな大事な彼女が、異国の貴公子風の男から言い寄られるとか……。
予想もしてない展開に、正直焦りが滲む。
2人で話がしたいとホテルのラウンジに呼ばれたひまり。
もちろん相手は、画材メーカーの社長だ。
前科(手の甲にキス)があるから、ひまりに警戒心を植え付けて……。
何事も起こらなければいいなと、切に願っていた。



