10月7日日曜日の午後1時半。
都内の某ホテルの個室にひまりと両親の姿がある。
その一室に、ホテルに宿泊中の Aaron Camille が姿を現した。
「ハジメマシテ、Aaron Camille デス」
「初めまして、ひまりの両親です」
アーロンは秘書兼通訳の女性を連れている。
簡単な日本語なら話せるといい、アーロンは通訳なしでひまりの絵の素晴らしさを褒め始めた。
事前に送付されて来た書類を確認するため、詳細を聞き、納得した両親。
ひまりの決断次第だという。
結果を急いでいるわけではなく、数年見守って来た中で感じた『成長期』が今だという。
多くの画家を育てている自負があり、良い機会だという。
アーロンは審美眼を持つという若き天才経営者として欧州では結構有名人。
まだ25歳というのに、その手腕は新進気鋭で美術界でも注目されている人物らしい。
そんな凄い人に認められたひまりは、この先の画家人生を約束されたようなものだという。
ブロンドに少し赤茶がかった髪に澄んだ青い瞳。
鋭い眼差しは全てを見透かしそうな力が籠っていて。
薄い唇の両端が僅かに持ち上がり、ひまりを愛でているのが窺える。
チャコールグレーの細身のスーツを身に纏い、黄色いポケットチーフがお洒落さを際立たせている。
身長180センチは優に超えていて、彫刻のような顔立ちにモデル級の容姿。
そして、誰もが羨む地位と実力を兼ね備えた、文句なしのイケメン貴公子だ。
「では、お返事は改めまして……」
「ヒマリサン、マタ オアイシマショウ」
「っ……」
アーロンはひまりの手の甲に口づけし、その場を後にした。



