(不破視点)
「え、それ、どういう意味?」
「だから、フランスの老舗画材メーカーから画材提供の申し出があったんだけど」
「あ、いや、それじゃなくて、その後に言ったやつ」
「ん?……フランス留学?海外の公募?」
「フランス留学ってのは、今すぐってこと?」
「詳細は分からない。留学も視野に入れて、フランスに来ないか?という申し出だと思うけど」
「………」
9月下旬。
お彼岸を過ぎて、一気に朝夕の気温がぐっと冷え込んで来た季節。
日中はまだ汗ばむ陽気だけれど、夜になるとひんやりとした空気に心なしか寂しさを覚える季節になったなぁと感じたある日。
ひまりから、突如予想だにしない話をされた。
ひまりの絵に魅了されたフランスの老舗画材メーカーの社長が、その才能に入れ込んで自分の手元で育てようという提案。
ひまりは表面的な所しか恐らく考えていない。
画材の提供と留学の援助、それと芸術の本場での足かけを喜んで手伝うという申し出。
公募なんて幾らでもある。
そもそも公募に応募しなくたって才能は発揮出来るし、何より稼ぐのと賞を取るのとは別問題。
けれど少なからず、ひまりの心を動かす材料になったのは間違いない。
俺の元からひまりを奪い取ろうとする奴が現れたということか。
ひまりがどんな決断をするのか、今はまだ分からない。
少しずつ地盤を固めれるように手を貸して来たが、正直強敵が現れたと言っても過言じゃない。
18歳になったばかりのひまり。
まだまだこれからどんどん才能を開花させるであろう。
だからこそ今、ダイレクトにオファーして来たんだろうから。



