未だに完全に俺のモノにしたわけじゃないけど。
古風で奥手で恋愛初心者のひまりを相手にしてるわけだから。
じっくりゆっくり無理なく、それでいてちゃんとお互いを大事に出来る関係性を築いている。
それなのに、重要な二科展を知らされなかったことへの焦りと怒りが爆発してしまって。
今、泣き崩れてる彼女を目の前にして反省中。
9月に展示会があるのは分かっていたわけだから、俺がちゃんとスケジュールを把握しなかったのが悪い。
彼女に全部の責任を押し付けるのは間違っていると気付かされた。
「もう怒ってないから、泣き止んで」
「………ん」
最近俺の自宅に来ると、緩く纏められたお団子を解くひまり。
巻き上げてたことで緩くくるんとカールされてる髪が良く似合ってて。
細くふんわりとした髪が、お人形さんみたいで。
ついつい触りたくなってしまう。
そんな彼女の髪を撫でながら、おでこにチュッと軽くキスする。
すると、視線を持ち上げた彼女はゆっくりと口を開いた。
「あのね」
「………ん?」
「パリ賞、……取ったの」
「………ん?」
「二科展のね、絵画部門のね、パリ賞ってのがあってね、その賞をね、私がね、取ったの」
「………えっ?!賞を受賞したの?」
「うん」
「それを先に言えよっ」
「だって、言おうとしたら怒っちゃったから……」
「……ごめん」
彼女が言うには、美術展のことをあまり聞いて来ないから興味が無いのかと思ったと。
だから、自分の眼で確かめてから報告しようと思ってたらしい。
分かった時点で教えてくれればいいのに。



