彼の素顔は甘くて危険すぎる


(不破視点)

夏休みを終え、ひまりとの距離がぐっと近づけたと思っていたのに。
二科展の展示会に両親と行って来たと告げられた。

彼女が絵を描くことをずっと応援して来たし、ずっと絵のモデルとして付き合って来たってのに。
一緒に行こうとか、いつなら行けそう?とか、言うのをずっと待ってた俺は、完全に蚊帳の外だったことに気付かされた。

毎年両親と行ってるから。
そんなことは分かってる。
知り合ったのだって、ちょうど1年前のわけだし。

だけど、『彼氏』なうえ『モデル』でもあり、『ファン』でもあるのに。
存在を忘れられたことがショックで立ち直れない。

視界に入れたら、怒りからめちゃくちゃにしてしまいそうで、彼女に背を向けた。

何度も謝るひまり。
分かってる。
俺の心が狭いことくらい。

だけど、濃密な夏休みを一緒に過ごしたこともあって。
自分の中では、相当ひまりの存在はデカくなったのに。

何だろ。
やっぱり、俺だけが好きすぎて空回りしてるっぽい。

もう少し冷静になったら済むことなんだろうけど。
今はイライラがMAXで、感情をコントロール出来そうにない。

Yシャツを軽く引っ張られたが、それを払いのけた。
そういうことしたらダメだって分かってるけど。
ひまりに触れたら、無理やり襲ってしまいそうで。

少し時間をおいた方がいいと思い、ギターのチューニングを始めた、その時。
背後からすすり泣く声が聞こえて来た。

「んっ……ッ……っんッ……」
「………あ、何で泣いてんだよっ」
「だって……」

あー泣かしちゃった。
どうしよう。