彼の素顔は甘くて危険すぎる


今日は液体に垂らす、1滴を描いているが、きっとこれもダメそう。
たぶん、根本的なところが違う気がする。

画材やタッチは何でもいいというから、とりあえず描けるだけ描いてるけど。
正直、完全に反り立つ壁にぶち当たってる。

天才の考えることは、凡人には分からない。

『ひまりらしい絵』と言われても、私って何?の世界だもん。
自分で自分が分かってないのに、他者に対して表現なんて出来ない。

休み時間に、ボーっとB5のスケッチブックを眺めて溜息を吐く。
不破くんみたいに降って来ないかな……。

天才肌では決してない。
描いて描いて描いて、描写力を培って来た私は、思い描く力が足りない。

「空想ねぇ……」

思わず声が漏れ出していた。

**

放課後、不破くんを連れて、図書館を訪れた。
足りない知識は、あるモノで埋めないと。

ジャンルは問わず、端からコレ!と思うものを探し求めて徘徊する。
不破くんはというと、意外なことに歴史のコーナーで何かを見つけたようで。
分厚い本を手に取って読み始めた。

頭のいい人はあんな分厚い本でも読みたがるのね。
厚さ5センチ以上はあろうかという本。
私なら序章部分で寝てしまいそうだ。

暫く館内を散策した私は幾つかの本を借りて、彼の元へと。
不破くんは棚と棚の間にある椅子に腰かけ、既に100ページくらい読んだらしい。
楽しそうな表情でページを捲った。

「面白いの?」
「……ん?あ、うん」
「借りてく?」
「そうだな」

3冊ほど借りた私を見て、彼も借りる気になったらしい。
本を手にしてカウンターへと向かって行った。