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「何、描いてんの?」
「イケメンの後ろ姿」
「イケメン?って、誰?」
「誰っていうか、イメージ的には不破くんだけど、短髪を希望されてるから、雰囲気だけ不破くんかな?」
「どういうこと?」
6月中旬、土曜日の昼過ぎ。
俺の家に来た彼女は、タブレットパソコンで絵を描いている。
その絵がどう見ても俺じゃない感じで、思わず声をかけてしまった。
絵を描いてる時は極力声をかけるのを控えてるんだけど。
喉が渇いたと思ってジュースを出しに近づいた時にチラッと見えて……。
彼女の話を聞くと、美大に向けてデジタル画を練習する為に専門のサイトに登録したらしい。
親友の麻友ちゃんって子と一緒に活動してるらしい。
そのサイト上で、絵師として依頼されたらしく……。
先を越されたか?
いや、これはあくまでも練習の一環だよな?
彼女の才能は前々から気付いている。
彼女の絵を見ていると、色んな感情が沸き起こって来るから。
それを曲にしたり、詩にしてアレンジしたりしてるけど。
本質的なところはそこじゃない。
水面下で彼女を認めててもダメだということ。
ちゃんとした形で、正式な手続きを踏んで、公の場で彼女の才能を活かしたい。
だから、少し前から動いてるんだけど……。
俺の知らない所で彼女も動いてるから、この先どう転ぶか、正直未知数。
出来れば、この手で彼女を咲かせたいから。
「それって、プロの絵師としての活動?」
「まさかっ」
よかったぁ。
まだ間に合うらしい。
早いとこ話を詰めないと危険だな。



