彼の素顔は甘くて危険すぎる


ひまりの手元に視線を落とすと、もちろん俺が描かれていて。
本人もビックリするくらいそっくりに描かれてるんだけど。

「俺、……こんな表情してんの?」
「うん」
「これも?」
「うん」

そこには、喜怒哀楽だけでなく……。
悩む表情だったり、納得したような表情だったり。
それこそ百面相のように色んな表情の俺がいる。

「飽きないの?」
「飽きない」
「疲れないの?」
「疲れない」
「しんどくないの?」
「大丈夫」

ダメだ。
完全に紙の中の世界の住人になってる、今。

本物が目の前にいるのに。
全く見ようとせずに、描き続けてる。

俺以外の男なら視線を逸らさせようと思うけど。
紙の中まで俺なのに、それでも嫉妬してる。

彼女の瞳に俺が映ってるんだろうけど。
絵の中の俺じゃなくて、ここにいる本物の俺を映して欲しいから。

「ひまり」
「……ん?」
「こっち向いて」
「………」

嫌々顔を上げたよ。
しょうがないなぁとでも言いたげな表情で。

彼女のために用意したローソファー。
その上に座り、膝の上にクロッキー帳を置いて描いている。
そのクロッキー帳を取り上げて……。

「んッ?!……ッ……」

ソファーに押し倒した。

「描いてばっかりで、俺のこと放置しすぎ」
「っ……」
「ちゅーさせて」
「………」
「ダメとは言わないんだ?」
「……だって」

最近、嫌がらなくなった。
というより、キスに慣れたってのもあると思うけど。
恥ずかしさが薄らいだようで、恥じらうことはあるにせよ、ちゃんと俺を待ってる感じがする。

「キスして、……欲しい?」

俺の言葉にほんの僅かに頷いた彼女は恥ずかしそうにぎゅっと瞼を閉じる。
そんな彼女にキスの雨を降らせた。