彼の素顔は甘くて危険すぎる


(不破視点)

6月に入り、ジメジメとした天気が続く。
今年の梅雨入りは早そうだ。

GWに彼女との関係を修復して、再びラブラブモードになったかと思ったら。
彼女は美術展用の作品に夢中で、俺の家に来ても殆ど会話もせずに絵を描いている。

俺が描いてと頼んだ題材も、筆休め的な感覚で描いたりしていて。
とにかく、俺は完全に放置状態。

付き合い始めて3ヵ月。
そろそろキス以外のこともしたいのに……。

シンセサイザーを弾くために椅子に座っている俺をじーっと見つめ、楽しそうに絵を描いてる。
彼女の隣に座りたくて腰を上げると、『座ってて』と言われるから近寄ることも出来ない。

あ、手が止まった。
もういいのかな?
彼女は描き終えるとニコッと満足げな表情を浮かべる。
それが合図なんだけど……。

腰を上げた、次の瞬間。
クロッキー帳のページを物凄い速さで捲った。
……まだ描くらしい。

いい加減、触りたい。
この距離を何とかしたい。
もっと近くじゃダメなの?

「ひまり」
「………ん?」
「ぎゅーしたい」
「……あとでね」
「今がいい」
「えぇ……」

絵具で描いてる時は色の配合時に手が休まるけど、鉛筆でクロッキー画を描いてる時は暫く描き続ける。
それこそ、集中してると声をかけても完全に聞いてないことも度々。

「ちゅーしたい」
「はいはい」

ほらね。
完全に空返事してる。

最近いつもこれ。
相槌さえすれば、俺が怒らないとでも思っているのか。
軽くあしらわれてる感じが否めない。

「限界っ!終了!!」

俺は腰を上げて彼女の元へと。