「けどそれってさ、経験値だけがモノを言うと思うんだよね」
「経験値?」
「ん、……例え脳内で空想したとしても、考えるってことを経験しない事には描けないし」
「……うん」
「楽しい、嬉しい、悲しい、苦しいとかも同じでしょ」
「……ん」
「山や海だって、写真や動画や実物を見て記憶に留めたものだからこそ描けるものもあるし」
「うん」
「曲も然りで、黒が黒であるように、ドの音はドだからそれを使って表現するってことだし」
「……ん」
「とにかく、あまり深く悩むな」
「………」
「感じたままを描けばいいんじゃね?」
「……うん」
彼が言ってることは分かる。
それこそが感性ってことだから。
感性があるからこそ、インスピレーションも湧くわけで。
要するに、沢山の感情を感じれるように心を豊かにするってことなんだと思うけど。
「俺らさ、まだ17歳じゃん。知らないことは山ほどあるし。色んな事を経験してるうちに磨かれてると思うよ」
「……そうだね」
「だから、無理やり描こうとかしなくても、筆が進む時に目一杯描けばいいんだと思う」
「ありがとっ」
きっと彼も曲作りに行き詰る時があるんだと思う。
そういう時は手を休めるってことを言いたいのだと思うから。
「たぶん、その経験値が少ないんだと思うの、私。だから、これからいっぱい経験したいっんッ?!!」
「バカっ、……そういうことは大きな声で言うもんじゃねぇって」
あ、そうだね。
知らない人が聞いたら、変な想像させちゃう。
不破くんは私の口を手で覆って、周りからの視線を遮るように体で隠してくれた。
こういう優しいところが大好きっ。



