彼の素顔は甘くて危険すぎる


「不破くん、そろそろ出番だよ」
「………」

名前を呼ばれて立ち上がる。
橘に相槌をし、ドッジボールのメンバーのあとに付いてコートへと移動した。
対戦相手は3年C組。
女子生徒がかなり少ないチーム編成のようだ。
3年だから、優勝を狙ってるのかもしれない。
適当にアウトになればいいか。

ルールは公式ルールとほぼ同じで、それに制限時間7分というのが追加されている。
制限時間に達した場合は、残っている内野人数を点数化し、それがポイントとして順位に比例するというもの。

審判である体育教師の笛を合図に試合が始まった。

「次、おだんごの子~」

完全に女子を狙っている。
うちのクラスは男子5人、女子7人。
3年のクラスは男子9人、女子3人。
しかも、運動が苦手な7人なのだから、到底勝ち目はない。

「遠藤っ、次は真ん中の子行くぞ~」

運動が得意でも男子が投げたボールは女子にとったら脅威でしかないだろうに。
相手チームの男子生徒は遠慮なくガンガン攻めて来やがる。
さすがにうちのクラスの男子生徒も黙っちゃいねぇ。

プロのパルクールで活躍している岡田和樹が、ボールを奪った。

「岡田っ、いいぞ~っ!」

すかさず担任が声援を送ると、傍観していたクラスメイトも声を上げ始める。

5分が経過した頃。
うちのチームは俺を含め残り4人。
相手チームは残り6人。
結構いい線いってるらしい。

「ヨシ、次は眼鏡かけてる子に~」

あ、次の標的は俺らしい。
やっと外に出れる、と思った瞬間。

「痛っ……」