(不破視点)
球技大会当日。
開会式が行われた。
プロアスリート軍団と運動が得意な連中が華々しく活躍する2日間。
昔からスポーツ自体は好きだが、この雰囲気はどうも馴染めない。
元々一人でいることが好きというのもあるが、無意味な張り切りが思わぬ怪我に直結してしまうからだ。
球技で指先を使わないで済むのはサッカーだが、普段から声を出してないのにクラスメイトの輪に入ることも出来ず。
結局、ヘルパーさんと同じドッジボールに振り分けられた俺は、出番が来るまで自分のクラス位置で静かに待つ。
適当にボールに当たりアウトになれば暫く解放されるし、無理に頑張る必要はない。
どうせ寄せ集めの残り者がする競技ということもあり、担任もそれほど重要視してないようだ。
無意識に視線で捉えた隣の席の橘ヘルパー。
今日も朝から忙しそうだ。
女性生徒の鉢巻きを結んであげたり、各種目の出場選手が書かれた紙を手にして、指示を出している。
本当にお人好しすぎる。
結構小柄で見た目がリスっぽい彼女は、イメージ通りにちょこまかと動いてる。
くりくりっとした垂れ目が印象的で、化粧バッチリの他のクラスメイトとは纏う空気感が違う。
何が違うんだろうと毎日観察して気が付いた。
この学校、基本『ナルシスト』や『エゴイスト』が殆どで、彼女のように元々抽象的な立ち位置の人は稀。
自己愛が強いがために他人に興味がない奴が殆どで、興味があったとしても自分の方が優位だと思い込む気質が殆ど。
金持ちの道楽のために作られたような学校というのもあるだろうが、基本、専門能力を発揮するための隠れ蓑だったり、メディア対策の学校らしい。
だからなのか、よくある苛めのような陰湿な空気は殆ど感じられない。



