彼の素顔は甘くて危険すぎる


5月3日10時過ぎ。
ひまりの自宅のインターホンを鳴らすが、応答がない。
仕方なく、小児科の受付へと向かうことにした。

たちばな小児科クリニックはGWの連休を前倒しで休診にしたため、今日は通常診療らしく、駐車場に沢山の車が止まっている。
待合室に沢山の親子連れがいる中、受付に顔を出すと。

「あっ、ひまりちゃんの彼氏くんじゃない!」
「ご無沙汰してます。自宅の方のインターホン鳴らしたんですけど、応答が無くて…」
「ちょっと待っててね」

事務の夏木さんが笑顔で対応してくれた。
少しすると、受付の横のスライドドアから彼女の母親が現れた。

「彼氏くん、いらっしゃい。ひまり、多分まだ寝てると思うんだけど、約束してた?」
「いえ、サプライズ訪問です」
「やっぱり?朝方まで絵を描いてたっぽいの。悪いけど起こして貰えるかな?」
「上がらせて貰っても大丈夫ですか?」
「えぇ、どうぞ。加奈ちゃん、通路の鍵開けてくれる?」
「はい。彼氏くん、どうぞ~」
「すみません、お邪魔します」

スタッフさんに軽く会釈しながら院内を通過し、自宅へと繋がるドアをくぐる。
夏木さんから『ごゆっくり~』と手を振られ、俺は自宅内の階段を3階へと上がった。

3階の突き当りの部屋。
『ひまり』と書かれたルームプレートが掛けられていて、そのドアを3回ノックした。
案の定、応答はない。
まだ寝ているようだ。

静かにドアを開け室内に入ると、衝撃的な光景を目の当たりにした。
床に散乱するキャンバスと木製パネル。
それに新聞紙が所狭しと敷かれていて、その上に画用紙らしき紙が置かれている。
状態からして、絵を乾かしているようだ。

踏まないようにそれらを回避しながら歩き進めて、窓際のベッドへと向かう。