彼の素顔は甘くて危険すぎる


和室続きの部屋に通され、襖越しにじっと構える。

程なくして、相手側が到着したようだ。
社長の声が聞こえて来た。

「お忙しい所、申し訳ありません。Rainbow Bridgeの代表の菅野です。こちらは弁護士の久我さん」
「初めまして、弁護士の久我と申します」
「初めまして、成瀬のマネージャーをしております、今田と申します」
「早速ですが、ご連絡申し上げましたように、当方に所属しているアーティストに関するご相談ということでお越し頂いたわけですが、……成瀬くんだよね?今日、ここへ来ている意味が分かるかな?」
「………はい」
「では、本題に入らせて頂きます」

社長の開口一番の先制パンチのような言葉に、胸の奥がスッとした気がした。
山本さんが『社長はデキる男だから』と言っていた通り、話し合いは完全にこちら側が握った形で進められた。

「刑法223条 強要罪、生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処すると法律で決められています。先ほどご覧頂いたように、身体を拘束した上での強要、脅迫行為は悪質です。当方と致しましては、今後一切このような事が起らぬように和解の申し出をしたいと考えています。……如何でしょうか?」

昨日俺が撮影した動画を証拠に、示談交渉へと進む。
俺はそれを襖越しに静かに聞いていた。

「分かりました。当方もこれ以上事を荒立てたくはありませんので、今後一切の関りを断つというそちらの条件を吞む形で。それに伴い、こちら側と致しましても、当方の活動に支障を来さぬよう、以後本件の持ち出し不可と明記させて頂いても宜しいでしょうか?」
「勿論です」