そこには、弁護士 久我 柾と書かれている。
「不破 聖と申します。今日は宜しくお願いします」
「話は伺ってます。緊張せずに気楽にね」
「……はい」
俺が名刺を受け取ると、社長が小声で呟いた。
「彼は来栖 湊の婚約者で、医師でもある。ダブルライセンサーだよ」
「え?!」
「お義父さん、それは言わない約束じゃないですかっ」
「ハハッ、そうだったそうだった。自慢の婿だからつい、悪い悪い」
一般人だというのは知っていたが、まさかダブルライセンサーだとは。
「ここだけの話だが、ちょっと前まで検事だったんだよ」
「えぇっ?!」
「カッコいいだろ」
「……はい、凄いですね」
男の俺でも惚れそうな見た目のカッコよさがあるのに、ちゃんとした地盤も固めてる人。
憧れるなぁ。
身長180センチは優に超えていて、少し茶色がかった髪は軽くアレンジされていて。
細身のスーツを完璧に着こなし、赤茶がかった革靴は磨かれ艶が出ている。
1ミリも隙が無い。
シンガーソングライターなんて、いつ陰りが出るか分からない世界。
売れている時はいいが、その人気が無くなればすぐに別の人が輝く世界だ。
弁護士、検事、医師。
男のステータスとも言える職業。
恋人を安心させられる、そんな世界だ。
事務所の社長が手配してくれた彼は、現在医師としと働いているらしいが、弁護士会に登録してあり、弁護士としても活躍しているらしい。
事務所の個人弁護士として。
『SëI』として契約している以上、一歩も引く気が無いと社長はいう。
俺は隣の部屋で会話を聞いていればいいという。
あくまでも、取引は大人の世界だからと。



