一方的に私から別れを告げたけど、彼から了承のような承諾のような言葉は聞いていない。
あえて聞かずに電話を切ったから。
『分かった』と言われることが怖くて、彼の言葉を聞く勇気が無かった。
我が儘だって分かってる。
身勝手だって分かってる。
彼が文句言いたくてかけ返して来たかもしれないけど、それさえも受け付けないように電源を切ったことも。
それから、着信拒否設定もしたし、迷惑メール設定もした。
だから、彼からの連絡を一切断ち切った形にしたのは私なんだけど。
それでも、身勝手すぎる私は諦めきれずにいる。
だって体操服姿の彼の首元に、未だにチェーンのネックレスがされているから。
指輪が見えたわけじゃない。
チェーンだけかもしれない。
だけど、一縷の望みは捨てないでおこうと思うから。
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5月1日、7時55分。
世の中はGW中で、通勤通学のラッシュの時間帯なのに、サラリーマンやOLさんの人数が激減したお陰で、電車内は快適だった。
登校するための駅からの道のりも、日曜日?と思うほど人気が少ない。
学校の下駄箱で上靴に履き替えた私は、玄関ホールの隣にある生徒会用の衝立の陰に隠れて彼を待つ。
彼が登校するのは一本後の電車だから、こうして数分待ってれば登校してくるはず。
10分ほどすると、彼がやって来た。
ズボンのポケットに片手を入れ、もう片方の手でリュックの肩紐をかったるそうに持ち、大きなストライドで優雅に歩く後ろ姿を視界に捉えた。
今日もカッコいい後ろ姿を見れた。
それだけで十分。
今日も一日頑張れそうだ。



