彼の素顔は甘くて危険すぎる


(不破視点)

4月27日の放課後。
翌日が開校記念日で休校扱いになっていて、明日から3連休。

昨夜、彼女の家を訪れて確認済み。
彼女は未だに俺のことを思ってると。
きっと何か理由があるはずだ。

彼女は『住む世界が違い過ぎて疲れた』と言っていたが、そんなことは問題じゃない。
『SëI』の人気が絶大なものになったとしても、それと『不破 聖』とは別の人格。

ひまりだって天性の才能があるんだから、それがいつ開花してもおかしくない。
それこそ、俺より知名度が上がるかもしれないし。
先のことなんて誰にも分からないから。

荷物を纏めて急いで彼女の教室がある西校舎へと向かった。

**

3階の一番端にある教室、3年D組。
そのクラスに向かうために渡り廊下を渡り終わった、その時。
視界の奥に彼女の姿を捉えた。

『ひまり!!』
そう大声で叫んで呼び止めたい衝動をグッと堪える。
その声で、俺が『SëI』だとバレてしまう恐れがあるから。

彼女の元へ駆け寄ろうとすると、彼女は階段を下へと下りるのではなく、上へと向かって上って行った。
それを無言で追いかける。
だって、4階は特別教室がある階で、普段は殆ど使われてないから。

彼女の後を追い4階へと上がった、次の瞬間。
彼女が入った教室の中に、もう一人の人物を捉えた。

誰だっけ、あいつ。

記憶を手繰り寄せる。
確か、スケートの選手だったような。
年度末の修了式の時に、壇上で賞状を受け取ってたやつだ。

プロの選手も多く在籍してることもあり、表彰式のようなものは頻繁にある。
それらを全部を覚えてるわけじゃないが、爽やか好青年みたいな顔が女子受けしそうで。
ひまりの好みだったら困るなぁと気に留めたことがある。