両親が経営する病院はGWの連休を前倒しにした事もあり、あわせて学校を欠席した。
父方の祖父の墓参りを兼ねて温泉旅行。
久しぶりに成瀬くんから離れられるというだけで気が楽になったが、不破くんに会えないということがこんなにも辛いとは思ってもみなくて。
自宅から片道3時間もある県に来ているのに、寄ったお店のBGMでも『SëI』の曲が流れている。
気にしないように努力してダメ。
ワンフレーズ聞いただけで、彼の姿が思い浮かんで。
毎日のように傍にいて過ごした日々が懐かしい。
『美味しい』と言って、私が作った料理を平らげてくれた彼が思い浮かぶ。
優しい眼差しで、リクエストに応えて弾いてくれたギターの音色も。
私のために作ってくれた『Eye』の曲も。
お揃いで作ってくれたペアリングも。
想い出が詰まり過ぎていて、胸が苦しくなる。
父の実家から帰省して部屋に籠る。
外出したら自然と彼の曲が耳に入ってしまうから。
聴いたら、彼の自宅に押し掛けてしまいそうで。
キャンバスに向かっても手が動かない。
描きたいものが思い浮かばない。
目を瞑ったら瞼の裏に彼が思い浮かぶし。
目を開けてても部屋中に彼が私を見つめている。
自分が描いた『彼』が。
処分が出来ない。
彼との想い出をゼロにしたくなくて。
何日も葛藤して、キャンバスや木製パネルやスケッチブックに描かれた彼をクローゼットにしまった。
捨てることは出来ないけど、今はこれが限界らしい。
だけど、視界から遠ざけただけで心の奥から引き千切られた感覚に陥った。
とてつもなく、悪いことをしていると思うほどに。



