彼の素顔は甘くて危険すぎる


GWは連休初日が開校記念日で休みということもあり、3連休の後に2日登校して5連休の予定。
前々からGWは帰省しないと聞いていたから、二人で遠出デートでもしようと話していたのに。

デート云々ではなく、付き合うこと自体が限界に来ていた。

登下校の際に指輪を着けて、日中は成瀬くんの視界に入らないように指輪を外す日々。
ただ外して着けるだけなら問題ないんだけど、それを不破くんに悟られるんじゃないかと気が気でない。

校舎が違うことが幸運に思えるほど、常に緊張の連続で。
校庭で体育する時はジャージの袖をわざと伸ばして手元を隠したり。
移動教室の際も教科書等を持つ手で右手を隠して校内を歩く。
職員室に用がある際も周りを気にして常に神経を尖らせて。

限界。
もうこんな生活辛すぎて。

夢の中の世界なら、刺客に抹殺を依頼したいほどだ。
それが出来ないから辛くて。

不破くんに会いたい。
声が聞きたい。
手を繋ぎたい。
頭を撫でて貰いたい。
ぎゅっと抱き締めて貰いたい。

して貰いたいことは山ほどあるのに。
だけど、それらを全て手放すのが一番楽な方法なんだと考えに至った。

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4月24日22時半過ぎ。
震える手でスマホを立ち上げ、履歴から『彼氏』という連絡先を押した。

電話に出たのは紛れもなく彼。
スピーカー越しでも分かる、ちょっと掠れた感じの声音に胸がキュンとする。

これが最期だと思うと、胸が張り裂けそうで。
ずっと聞いていたい声なのに。
『ひまり』と呼ばれることがこんなにも嬉しいと改めて実感したのに。

それでも、彼との縁を切る時が来た。

通話を切ってへたり込む。
何を言ったのか覚えてない。
言わなくちゃいけないことは全部言ったはず。

スマホを握りしめて、涙がとめどなく零れ落ちて……。