例え、彼氏が不破くんだと知ったとしても問題ない。
ただ単に同級生と付き合ってるというだけだから。
だけど、『彼氏の正体』というワードは聞き流せない。
言葉の言い間違いなら、あえて突っ込んで聞き返すのは危険だ。
かまをかけて話してるのだとすれば、更に危険度が増す。
脳内で必死に言葉の真意を読み定め、次の言葉を待っていると。
「あの声はかなり特徴的でしょ」
「………」
必死に焦り狂う感情を押さえ、無表情に徹した。
だって、取り乱したら完全にアウトだもん。
彼の声は、成瀬くんが言うようにかなり特徴的だ。
掠れてる感じなのに、甘く痺れるような……。
巷で大人気ということもあり、テレビやラジオを付ければいつでも流れて来るし、街中を歩けばどこからともなく聞こえてくるほど、日常に浸透している。
けれど学校での彼は、殆ど言葉を発しないのに……。
去年は別のクラスだったから、授業中での彼の発言も聞いたことないはずなんだけど。
一体どこで関わったのだろう?
肯定も否定も出来ない。
私が一つでもアクションしたら、それが決定打になりそうだ。
背筋が凍り付くのを感じる。
今にも手足が震え出しそうで…。
視線が泳ぎそうになるのを必死に堪えた、その時。
彼が腰を上げて、私の耳元に呟いた。
「彼が『SëI』だって、知られたくないんでしょ?」
「っ……」
知らないふりをしようと試みたけど、『SëI』という単語に体が反応してしまった。
そんな私を彼が見逃すはずもなく……。
「別に『SëI』に興味があるわけじゃない。俺が気になるのは、……橘 ひまり」
「………どういうこと?」
「奴と別れて俺と付き合わない?」
「………」



