(ひまり視点)
3年になり、今年も学級委員長になったひまり。
活動シーズン中の生徒が数名いて、クラス全員での始業式では無かったけれど、新しい年度が始まった。
数日後の昼休み。
クラスメイトの成瀬くんが声をかけて来た。
「橘、今ちょっと時間あるか?」
「今?……うん、大丈夫だけど」
何かの相談事かな?
彼の後を追って4階の特別教室のある階へと。
成瀬くんはフィギアスケートの選手で、笑顔が爽やかな美男子だ。
そんな彼との接点はほぼなく、入学してからまともに話したのはこれが初めて。
ちょっと緊張しながら階段を上った。
普段使われていない空き教室へと入ると、彼は窓際の席に腰を下ろした。
その場所へと行くと、彼は口角を少し上げ微笑んだ。
「何か、相談事でもあるの?」
学級委員長という立場から、結構相談事を受けることもある。
まぁ、大抵は委員活動が出来ないから代わってだの、誰々からしつこく迫られてるだの。
アイドルやモデル活動をしてる子も多いからだと思うけど、容姿が綺麗な子が多いのが難点。
彼からの言葉を待っていると。
「橘の彼氏の正体、……俺、知ってんだよね」
「………え?」
突然発せられた言葉の意味を理解するのに、数秒かかってしまった。
先月のバレンタインデーから正式に付き合うようになった彼。
普段は無口で不愛想だけど、ちゃんと私のことを気にかけ、ここぞの時は助けてくれる。
しかも、二人きりの時は学校での彼とは別人で、甘いセリフもくれるし、妖艶な視線でせまるような……。
指輪を貰ってから一度も外したことがない。
だから両親はもちろんのこと、クラスメイトも彼氏の存在は知っていて……。



