彼の素顔は甘くて危険すぎる


帰宅すると、彼女はすぐに夕食準備に取り掛かった。
しかも、ケーキのデコレーションは苦手だから、時間がかかるという。

俺はブースに籠って、編曲の為のドラムを叩き始めた。

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喉が渇いてブースを出ると、ダイニングテーブルの上に所狭しと並べられた料理の皿。
しかも、真ん中にフルーツてんこ盛りのケーキまである。

「すげぇな」
「我ながら、いい出来だと思う」

俺が好きだと言ったミネストローネまで作ってくれたらしい。
すんごいいい匂いが鼻腔を擽る。

「そろそろ始める?もう少し後にする?」
「もういいんじゃね?」
「じゃあ、準備するね!」
「は?」

準備って、何?
テーブルの上はもう十分並んでるよ?

ひまりはリビングにあるキャリーケースの中から袋を取り出し、リュックを丸ごと持って来た。

「えっとね、これはうちのママからね。……私とお揃いらしい」
「え?」
「で、こっちはうちのスタッフさんから」
「………なんかすげぇな」

ひまりの母親からパーカーを貰った。
彼女とは色違いらしい。
それって、ペアルックじゃん。
ひまりのママ、超最高!!

スタッフさんからは制服の中に着るカーディガンを貰った。
みんなで出し合って買ってくれたらしい。
次行った時に御礼しないと。

「で?……ひまりは?」

両手を差し出しておねだりしてみる。
料理やケーキを作ってくれたし、もしかしたらないのかもしれない。
それはそれで構わない。
1日一緒に過ごせるだけで十分だし。

「……はい。17歳のお誕生日おめでとうっ」

やっぱりあった。
だって、キャリーケースの荷物の他に、リュックからまだ出して無かったから。

「何だろ。めっちゃ楽しみ」