彼の素顔は甘くて危険すぎる


古風な子だから、いきなりは無理なのは分かってる。
手を繋ぐのだって俺から掴まなきゃ繋げないし、抱き締めるのだっていつも俺から。
だから、刷り込み刷り込みしながら、少しずつハードルを下げておかないと、先には進めない。

それに、まだ『お誕生日おめでとう』とは言われてない。
ケーキを食べる時にでも言うつもりなのだろうか?
ホント、彼女の考えてることはいまいちよく分からない。

「不破くんも」
「……ん?」
「その、………そういうことしたいの?」
「………へ」

後ろから抱き締めてるから表情は分からない。
だけど、彼女の口から意外な言葉が飛び出して来た。

「そりゃあ、男だし。……可愛くて好きな子なら、したいと思うもんでしょ」
「っ……」

予想に反していい反応を示した。
こういう手の話は正直引くかな?と思ってたから。
肩がぴくっと跳ね、恥ずかしそうに手で顔を覆った彼女。
只今、妄想してる最中らしい。
めっちゃ可愛い。

「俺、腹筋割れてるよ?」
「んっ……、いいからっ、そういうことを口にしなくてッ!」

やべぇ、可愛すぎる。
耳まで真っ赤になった。

楽器を演奏するのも歌うことも、常にインナーマッスル鍛えておかないといい声は出ないし長時間演奏出来ない。
筋トレは音楽をするために昔からやっている。
だから、自然と腹筋は割れるし、腕や足にも筋肉はほどよく付いてる。

「見なくていいの?」
「もうっ、黙ってて……」

悪ふざけで耳元に呟いたら、体を反転させて俺の胸に顔を埋めた。
なんだ、出来んじゃん、こういうことも。

メイド服じゃなくて私服に着替えたからなのか、距離がグッと近くになった。
それも、上出来と言わんばかりの反応を示して。