朝食の片付けをして、洗濯物を干す。
「自分でやるって」
「ご主人様はあちらでお寛ぎ下さいませ」
「ったく」
洗濯物に下着が入ってるから気になるらしい。
だけど、父親や兄ので見慣れてるから、さほど気にも留めないなんだけどね。
彼の方が照れてる。
何だか新鮮。
「この後は、如何されますか?」
「何かいい匂いがする」
「あ、はい。夕食の準備をしてます」
「え、まだ10時だよ?」
「はい♪10時です」
チョコレートトリュフは作って来た。
だけど、やっぱりそれだけじゃ物足りない。
誕生日と言えば、やっぱりケーキでしょ!
彼が食べてる間に生地を作って、今オーブンで焼いてる所。
手のかかる料理は自宅で昨夜作って、それをタッパーに詰めて持って来た。
あとはお皿に盛るだけ。
「一日中、そのメイド仕様するつもり?」
「お嫌ですか?」
「嫌じゃないけど、……距離がある」
確かに。
立場を弁えた口調だし、必然的に距離を取って話してる。
「着替えましょうか?」
「他のコスプレに?」
「……ご希望であれば」
「いや、普通がいい」
「では、私服に着替えます」
「お願いします」
彼まで丁寧な口調になってる。
しかも頭まで下げて。
「ちょっと着替えて来るね。洗面所、お借りします」
「ん、待ってる」
着て来た服を手にして洗面所へ向かった。
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「ねぇ、部屋がいつも綺麗だけど、不破くんが掃除してるの?」
「んなわけねぇだろ。ハウスキーパーさんが入ってる」
「あっ、そういう人がいるんだぁ。掃除もしようと思ったんだけど、する所が無かったから」
「掃除なんてしなくていいから」
「んっ……」
リビングに戻った私を彼が抱き締めた。



