彼の素顔は甘くて危険すぎる


黒地に白いエプロンの王道カラー。
ハイウエストで胸元を強調するデザインのコルセット編み上げ仕様。
黒いニーハイソックスを穿いて、白いカチューシャを着けたら完成。

ふんわりとしたデザインで可愛らしさは出てると思う。
洗面所の鏡でチェックしていると、『入るぞ』の声の後に彼が現れた。

「おっ、超いいじゃん!めっちゃ可愛い♪」
「……お褒め頂きありがとうございます、ご主人様」
「え、……マジか」

兄から伝授されたメイド仕様の言葉使い。
文化祭でも経験がある分、これなら柔軟に対応出来そう。

「あ、洗濯もしてくれてんの?」
「はい、他に御用はございますか?」
「あ、いや……別に」

視線を逸らした彼。
だけど、普段見せないちょっと照れたような表情を見てしまった。
これこれ。
これが見たかったんだよね。

「朝食の準備も致しますので、少々お待ち下さいませ」
「っ……」

手で口元を覆いながら、鏡越しに破顔してるのが分かる。
彼はこういうのに弱いらしい。

丁寧にお辞儀をしてキッチンへと向かった。

夕食や昼食を作ることはあっても、朝食を作ることが今まで無かったから。
彼が食べたい物が分からない。
だから、彼が普段好んで食べそうなものを作る。

サラダと牛乳とクロックマダム。
それと自宅から持参した苺ババロア。
彼の自宅にあるイチゴジャムをババロアにほんの少し乗せたら完成。

「めっちゃ旨そう!」
「どうぞ、お召し上がり下さいませ」

彼が食べ始めたのを確認して、珈琲を淹れ始める。
今日は一日彼をもてなす日。
とはいえ、何でもじゃないんだけど、とりあえずは出来ることはやろうと思って。