彼の誕生日の3日前の昼休み。
隣りの席に彼がいるけど、会話せずにLINEをする。
学校では極力会話を避けてる彼のために、私に出来ることはこれくらい。
『今日の放課後、ちょっと用があって行けない。ごめんね』
今日は注文しておいた品の受取日になっている。
それを自宅に持ち帰って他のものと一緒にラッピングしないとならない。
『了解』
いつもながらに簡素な返事。
だけど、チラッと視線を寄こしてくれたことが何より嬉しかった。
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駅までの道のりはいつも通りに肩を並べて歩く。
駆け出しの俳優やモデルも多く通っていることもあり、事務所のスタッフが校門前に迎えに来ている人も多い。
そんな彼らの横を素通りして、最寄り駅に到着した。
「途中で降りるから」
「ん。……気をつけろよ」
「……ありがと」
駅まで来ると、同じ制服を着ている生徒は少ない。
だから、ホームの端の椅子に座って電車を待つ間、彼と小声で話すのが日課だ。
「土曜日はお仕事入ってるの?」
「オフにして貰ってる」
「じゃあ、不破くんちに行ってもいいの?」
「うん、ってか、そのつもりだけど?」
彼はあまり街にも出たがらない。
人付き合いはあまり好きじゃないらしい。
そんな彼だからこそ、家での彼はある意味特別な彼なのかもしれない。
他の人が知らない、不破 聖であり、『SëI』だから。
「土曜日、何の日か覚えてる?」
「……もちろん」
「んじゃあ、楽しみにしとこっと♪」
スクール仕様の彼は無表情が基本なのに、珍しく外で笑顔を見せてくれた。
私だけに見せてくれる、ちょっと贅沢すぎる表情で。



