彼の素顔は甘くて危険すぎる


その日の夜。
帰宅した私はネット検索をした。

ギターも詳しくなければ、それ以外の楽器にも殆ど知識がない。
幼い頃にピアノを習いに通わされたけど1年ほどで止めてしまった。
自宅に帰ってからも練習する日々が苦痛で。
それをする時間があるなら、絵を描いていたかったから。

そのピアノ教室の代わりに通い始めた絵画教室。
隣りの街にあって、週に何回も通えなかったけど、それでも通えることが嬉しくて。

きっと、私が絵を描くことが好きなように、彼も楽器を演奏したりすることが好きなんだと思うから。

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彼のために出来ることを探した結果。
やっぱり私には絵を描くことくらいしか能がなかった。

それを最大限に活かして、少しでも彼に感謝の気持ちを伝えたい。
いつも私を大事にしてくれてることへの想いを。

彼が好きだという白龍を描く。
描いたことのないジャンルだから、上手く描けない。
ネットで沢山検索して、それを見本にオリジナルの龍を描く。

それと、彼が好きだと言ったアルカションの景色も。
これらを上手く融合させたい。
何をどうやって融合させたらいいのだろう?

彼の誕生日まで1カ月しかない。
毎日彼の家に通ってると、制作に割ける時間は帰宅後から深夜になる。
……間に合うかなぁ。

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翌日の金曜日の日中、校内で。

「ひまり、眠そうだな」
「……ん、結構遅くまで起きてたから」
「今日はちゃんと寝ろよ?」
「………うん」

音楽の授業の後、教室へ戻る途中に彼が声をかけて来た。
学校では殆ど喋らない彼だけど、目の下にクマが出来ている私を見かねて声をかけて来た。