「ギターを教える工賃?」
「っ……」

ニヤッと笑う彼は楽しそうに私の指を動かして別のコードを弾かせようとしている。

「今のは偶々だからっ」
「フッ、……分かってるって」

その後、十分ほどギターを弾いただけなのに、結構指が痛い。
しかも、爪にかなりの負担がかかってることが分かる。

「これ、結構負荷がかかるね」
「だろ?このギターでこれだから、俺が使ってるのだともっと酷いよ」
「ちょっと見せて?」

彼の指先を初めてまじまじと見つめた。
パッと見は綺麗に手入れが施されてる風に見えるけど、よーく見ると、施したネイルがかなり剥げているのが分かる。

「痛む?」
「痛みはない。痛むくらいなら弾きすぎか、弾き方が悪いってことだから」
「そうなんだぁ」

私は素人だから後者だろうけど。
それでも、どんな職業にもデメリットは付き物だもんね。

「ひまりの爪も手入れしてやろうか」
「え?」
「ピカピカにしてやる。こっち来て」

手を引かれ、元いたリビングへと。
ギターリストが愛用するというジェルネイル。
爪を保護するためのものらしい。
それを施す前に爪を綺麗に整える。
それを彼が手際よくやってくれた。

十分ほどで綺麗に仕上がった指先は、見たこともないほどに光り輝いている。

「これで、おそろ」
「フフッ」

彼の細長い指と並べて眺めてると、彼がスマホで写真を撮り始めた。
ホント、こういうことが好きらしい。

「あ、ご飯の支度、まだ終わってなかった。今するね~」
「そんな慌てなくてもいいのに」