他にも沢山質問した。
彼のことを知りたいというのもあるけど。
一番は、彼が何を感じてるのかが知りたかった。
私が見ている世界と違うから、人それぞれの見てる世界……それを。
何とか聞き出したモノから、プレゼントを考えないとね。
**
夕食を作っている手を止めて、リビングにいる彼の元へと。
「おっ、ビックリした!何、どした?」
「何してるの?……爪の手入れ?」
「ん、そう。これしとかないと、爪が割れるから」
「楽器の演奏で?」
「そそ、ギターとかベースとか。ピックを使うことも多いけど、曲調とかギターの種類とかでピック無しで演奏もするから」
「それで、爪が割れるの?」
「弾いてみるか?」
「触ったこともないけど、弾けるもの?」
「うん、簡単なコードなら弾けるよ」
彼に手を取られてブースに連れて行かれる。
「これならひまりでも弾けるよ」
手渡されたのは、かなり小さいギター。
ウクレレとは違うみたいで、オレンジ色の可愛らしいギターだ。
「Zo-3 ギター。ぞうさんの形をしてるからそういう名前なんだけど、これはアンプ内蔵だから、簡単に音が出せる」
「……うん」
アンプ内蔵と言われても分からない。
だけど、言われてみればゾウさんに見えなくもない。
「ここに座ってみ」
彼に言われるままに椅子に腰かけると、彼が背後から腕を伸ばして来た。
私の左指を優しく弦に添わせて、右手の親指を弦に当てた。
そして、左指の上から軽く彼の指が押し支え、右手の甲をそっと下に下ろすみたいに。
ジャーンッという音が鳴った。
生まれて初めてギターを弾けたことにちょっと感動して。
思わず背後にいる彼を仰ぎ見た、その時。
僅かに私の唇が彼の頬に触れた。



