彼の素顔は甘くて危険すぎる


10月上旬。
ひまりが通う学校では、体育祭の代わりに毎年球技大会が行われる。

ソフトボール、テニス、サッカー、バスケ、卓球、バレーボール、ドッジボールの7種目。
各クラスの男女比率が均等でないため、女子がいるチームは一人当たりで加点が付き、プロアスリートがいる場合は、専門外の種目に参加しなければならない。
毎年10月中旬に2日間かけて行われる。

ひまりのクラス2年B組でも、LHRの時間に球技大会の各種目の参加者を決めている。

「では、黒板に各種目が書いてあるので、必ず1種目以上どこかしらに名前を書いて下さい。定員を超えた場合は、じゃんけんなりくじ引きなりで決めること。……他に質問は?」

ひまりがクラスメイトに説明すると、やる気のある生徒は一様に顔を見合わせている。
運動が得意ではない生徒ももちろんいるし、運動自体が嫌いな生徒もいるため、揉めないように決めるのは毎年悩ましい所。

「では無いようなので、今から15分間時間を取りますので、枠からはみ出さないように書いて下さいっ!」

ひまりの声掛けでクラスが一瞬で賑やかになる。
仲のいい人同士が纏まり始め、何に出場するのかを話し始めた。

「不破くん、……何に出る?」

どうみてもクラスに馴染めてない不破に対し、心配になったひまりはやりたいものがあるのか尋ね始めた。

「余りものでも大丈夫?……多分、ドッジボールとサッカーが余ると思うんだけど」
「………」

いつもの無言頷き、頂きました。

「じゃあ、あとで名前書いとくね。私も同じものになると思うから」
「………」

相槌の無言頷き、頂きました。
もうすっかり定着したね。
無視されてるわけじゃないから、意外にも安心出来る。
無言なのにね。