同じ学校の1年の女が去った後、コンビニに炭酸飲料を買いに行った。
――シャラン。
スマホのアプリで会計を済ませて、外に出た。
もう外は真っ暗だ。
ふと思い出したのは、さっきの女。
「あいつ、ちゃんと目的地に着けたかな」
同じ学校の1年生。
眼鏡をかけていかにも地味って感じの……。
同年代の女子高校生にしては、少しだけ野暮ったい印象が強かった。
日本人形みたいな真っ黒な髪をおさげにして、セーラー服のスカート丈も少し長い。
「あそこまで地味なのも……却って珍しいな……」
なんかダサい大きなリュックとか背負ってて……。
だけど、眼鏡の奥の瞳は小動物みたいにクリクリしてて、睫毛もばっちり長かった。
抱えた感じだと、ちゃんと出るとこ出て、締まるところは締まってて……。
「……ああ、それに、声も可愛かったか……」
ふと――。
小学生最後のバスケの試合。
わざわざ隣町から応援に来ていた女子が、俺にきゃあきゃあ声をかけて来たのを思い出した。
『せとくん!! 魔法使いみたいでカッコイイ!! それに……』
『それに……?』
『……すっごく努力家なんですね……!』
『見てないのに、なんで……そんな風に思ったの?』
『あ、ご、ごめんなさい、この練習ノートを拾っちゃって……その……毎日毎日びっしり書き込みがあったから……勝手に見てごめんなさい! これを届けないとって思っただけなんです! それじゃあ!』
同学年で身長が高いから強いんだって、周りから文句言われてた頃だった。
だけど、ちゃんと自分が努力してるって分かってくれる子がいるんだって、そんな風に思って……。
「なんか、懐かしいこと思い出しちまったな」
――久しぶりにバスケをしたからだろうか?
背の小さな女子。
思えば、あの子も黒髪が長くて綺麗で、目がクリクリしていて、すごく可愛かった。
あの女子も今頃高校生になっているんだろうか……?
「声が似てた気がするけれど、さすがに気のせいか……俺も、らしくねえな……」
もうしないって決めてたはずなのに……。
身体が疼いて仕方がなくて……。
気づいたら、バスケットボールを持ち出して、コートで練習していて……。
そんな中、出会った不思議なメガネの女子高生。
「……くっ……」
思い出せば出すほど、クツクツ笑いが込み上げてきた。
「まさか、俺が肩痛めてんのにも気づくとは……」
トロそうだったが、洞察力は高そうだった。
そう思えば、不思議でしょうがなくなっていく。
「ちょっと危なっかしい感じがしたが、また迷ってるところに遭遇したりしてな……って……!」
その時、俺は大事なことに気付く。
「あいつのリュック持ったままじゃねえかよ……」
どうやら、またどうにかして会わないといけないようだ。
そのことで気分が高揚していることには気づかないことにする。
――再会のカウントダウンがもう始まっているなんて、その頃の俺は思ってもみなかったのだった。


