試合再開。
ちょうど、同じ高校の生徒が瀬戸先輩の噂をしていた。
「久しぶりなんだろう? 動けるわけないって思ってたのに……」
「ああ、あの伝説の0番、瀬戸だろ? すごすぎだよな……」
「とはいえ、さすがに勝てないって……」
「1点差だから、まだ負けだって決まってないさ……!」
「でも、もう時間ないぜ……!」
子どもの頃にテレビ越しに見た試合の時みたい――。
負けてるはずなのに――。
瀬戸先輩は、すっごく楽しそうにコートの中を駆けまわってた。
今は直接感じることが出来る。
先輩の、バスケが好きで好きで仕方がないっていう気持ち。
私の心臓がドクンドクンと速くなっていく。
10秒、9秒、8秒……。
ついにはじまった試合終了、運命のカウントダウン。
昔見たテレビ画面と重なってみえる。
ボールを持っているのは――。
「瀬戸先輩……」
敵がドライブコースに立ち塞がったけど――。
ロールターンして、ボールを逆の手に持ち替えて、横から抜き去った。
次に来た敵選手のことはフロントチェンジで抜いていく。
同じ人間だとは思えない。
素早くって勢いがあって……。
相変わらず、しなやかな黒豹みたいな動き。
そうして、ゴールの前に立つ敵の前。
ブレーキをかけた瀬戸先輩が、プルバックドリブル!
敵が先輩の背中側に来たから、クロスで抜き去って――。
そうして――。
ゴール下を守るディフェンスの前でユーロステップを決めて――。
高くジャンプしてボールをシュートした!
ピピ――っ!!
笛の音が鳴り響く。
残念だけど、時間切れ。
「先輩……」
悔しいだろうな……。
だけど、まだ終わりじゃない。
高校生になった私は知っている――!
まだ負けてない――!!
そう思った、その時――。
シュパンッ!
ボールがゴールの中に入った。
同時に――。
わああああ――!
皆の歓声が上がりはじめる。
それは波のようにどんどん広がっていって……。
瀬戸先輩が嬉しそうにしている中、仲間の皆に揉みくちゃにされはじめる。
死んだお母さんの声が頭の中に蘇る。
『ブザービートよ』
「逆転勝利……!」
じわじわ後から嬉しさがこみあげてくる。
子どもの頃みたいに、こっちまでどんどん気持ちが上がっていく。
……最後まで諦めないのって……本当に大事なことだって……。
子どもの頃以上の感動が私の中に渦巻いた。
そうして――。
コート中に大歓声が巻き起こったのだった。


