チャンチャチャンチャン、チャンチャチャンチャン♪
スマホの着信音が鳴った。
「もしもし」
電話の主は山城だ。
『あ、瀬戸先輩! きゃああッ……!』
だけど、叫び声は加賀美百合のもので……。
「な……」
なぜか二重音声で聞こえた気がする。
「おい! 山城! どうなってる!? 加賀美百合はどうした!?」
だが、相手からの反応がない。
あいつの身に何が……。
「俺の大事な加賀美百合に何かあったら、絶対に許さないからな!!」
すると、山城から返事があった。
「大事って、大事な家政婦さんってことでしょう? だったら、僕が何しても良くない?」
「何してもって、何する気だよ!!?」
思わず大声を上げてしまった。
「それは、百合ちゃんと……キスとか??」
山城のふざけた態度が透けて聞えて、俺のイライラは頂点に達した。
「キスでも何でもな! 加賀美百合と色々やって良い男は、この世で俺ただ1人だ!!」
電話口で叫んで、ピッと画面を消した。
慌てて、バスケットコートを駆け出そうとしたのだけれど――。
「あ……」
――なぜかそこには、ニヤニヤしている山城達、バスケ仲間と――。
「加賀美……百合……なんで……」
目の前には――全身真っ赤になっている加賀美百合の姿があった。
「瀬戸先輩……」
嘘だろ、今の聞かれて……!
けれど、一度聞かれた言葉は撤回出来ない。
覚悟を決めるしかない。
「加賀美百合、俺は……!」
彼女に詰め寄ろうとした、その時――。
「ちょうど6人いるし……百合ちゃんをかけて、今度は3on3だ!!」
山城がそんなことを言いはじめた。
「瀬戸と久しぶりにバスケとか楽しみだな!」
「ああ、ずっと待ってたんだぜ、お前が帰ってくるのをさ!」
「あの時の瀬戸よりも、俺の方がうまくなってるってとこを見せてやる!」
バスケ仲間達も嬉しそうに俺に話しかけてきた。
俺のせいで色々あったはずなのに――。
皆、ずっと俺よりも大人だな……。
俺が立ち直るのをずっと待っててくれたんだ。
目頭が熱くなってくる……。
唇が戦慄く。
なんとか必死に声を振り絞った。
「本当に……ごめん」
小さすぎて、皆には聞えなかったかもしれないけれど――。
「弱気な瀬戸とか、らしくないって! ね、百合ちゃん」
「え? 瀬戸先輩は、わりとこんな感じなところありますよね……」
そんなことを加賀美百合が言うから、皆がまたもや囃し立てはじめた。
誤魔化すように、俺は叫んだ。
「ああ、お前達が待ってたって言うんなら、仕方ねえな!!」
そうして――色んな事を乗り越えた俺は――加賀美百合と初めて出会ったバスケットコートで、皆と一緒にまたバスケをして過ごすことが出来たんだ。


