昼下がりの公園。
俺はバスケの練習を一人でやっていた。
「なんだよ、加賀美百合のやつ……」
あいつがバスケ部のマネージャーになるならないとか言い出したせいで、やけに胸の中がモヤモヤしていた。
だって、彼女がマネージャーになるってことは……。
つまり……あいつが他の男子達とも会話するってことで……。
「俺だけの専属家政婦でいてくれたら、それで良いのに……」
俺以外のやつと一緒にいるあいつのことを想像するだけで、嫌で嫌でしょうがなかった。
しかも、最近の加賀美百合は、メガネを外してコンタクトにしてしまった。
「ああ、くそッ……あいつが美少女だってバレたら……男達が殺到して……」
『バスケ部のマネージャーをしたら、瀬戸先輩よりも推したい人が出来ました!』
そんな風に言われるんじゃないかって思ったら……。
もう何が何やら気が気じゃない。
ボールも普段通りにはさばけない。
イライラしてドカッとベンチに腰掛けた。
「どうしたら良いんだよ……ああ……」
焦燥感だけが募る。
ふと――。
人影が差した。
『先輩、山城先輩のところには行かずに戻ってきましたよ!』
都合の良い妄想が頭を過ぎって、顔をぱっと上げた。
「加賀美百合……!」
けれど――。
「お兄ちゃん、そんな怖い顔してたら、あの優しいお姉ちゃん、逃げちゃうよ……」
「……ッ」
現われたのは、いつぞやのバスケ少年ハジメだった。
ガキのくせに鋭いやつだ。
加賀美百合じゃなかったことで、内心ガッカリしている自分には気づかないようにする。
「うるせえな……」
「こわ……小学生相手に態度悪……今のSNSで呟いて拡散しちゃおうかな……」
最近のガキはすぐこんなこと言ってきやがって……。
その時――。
「瀬戸のお兄ちゃんのおかげで、僕、また皆とバスケが出来るようになったよ……!」
嬉しそうにハジメが話しかけてくる。
「そうか……」
ガキのこいつが頑張ってるんだから、俺も頑張らないといけない。
そんな風に思っていたら……。
――SNSメッセージが届く。
「山城じゃないか……」
書いてあったのは……。
『メガネを外した百合ちゃんがこんなに可愛いなんて思わなかったな……瀬戸の彼女でもなんでもないし、僕がカレシに立候補しようかな……』
……ミシッ……。
うっかりスマホを壊しかけた。
「素手でスマホ破壊しそうな人とか初めて見たや……動画で撮っておけば良かった」
「ハジメ……俺を煽ってんのかよ、てめえは……」
「ちょっと、お兄ちゃん、やめて、ほっぺた摘ままないで、傷害罪で訴えるよ」
「このませガキが……」
「うひゃあ、僕にこんなことしている暇があったら、お姉ちゃんとさっさと仲直りした方が良いひょ」
ハジメとゴチャゴチャやっていたら――。
「瀬戸――そんな風に乱暴者には育てたつもりはなかったんだがな……」
バスケットコートに低い声が響いた。


