――シュパッ。
ボールがリングに入った。
もちろんシュートを決めたのは、私なんかではなく……。
「ほら、加賀美百合……! 俺に抜かれてばっかりじゃないか……?」
手元に返ってきたボールでドリブルしている瀬戸先輩が、意地悪な笑みを浮かべている。
「ぐぬぬ……」
実力試し。
どんな手段でも良いから、俺からボールを取れと言われて、私は挑んでいるんだけど……。
「これ以上は点をとらせません! ディフェンスです!」
ドリブルを続ける彼に、飛びかかるようにして挑んだけれど……。
瀬戸先輩はすぐにボールを後ろにドリブルして、さっと私の隣を駆けていった。
――プルバックだ!
そうして、得意のダンク――!
もう一度、自分でボールを取ると、彼が私に笑いかけてくる。
「加賀美百合は体力がないな」
「……うう……」
残念ながらその通りだ。
推しのセト君を追いかけていたので、無駄にバスケ用語に詳しいだけの、にわかである……。
「じゃあ、ほら……負けてばっかりも楽しくないから……初心者のお前でも楽しめそうな、シュート練習な」
そうして、私たちはリング下へと向かう。
「やってみろ」
「はい! えいッ……!」
そうしてボールを投げるが、なかなか入らない。
こんなに近い気がするのに……。
「普段ボール使わないやつからしたら、距離感掴むだけでも苦労するんだな……」
感心したように彼が呟いた。
「こう……飛び方を変えたら、どうにかなるものですか……?」
「シュートフォームは変えるなよ。変えるんなら、ボールを離す時の指先の感覚だな――見ておけ、こうやって手首をしっかり返して――」
そうして、彼が綺麗なシュートフォームを保ったまま、ボールを離す。
綺麗な弧を描いて……。
――シュパンッ。
ゴールに入った。
「先輩、すごい! カッコイイ!!」
そう伝えると、彼は嬉しそうに微笑んだ。
「褒められて悪い気はしないな……さて、今度はお前の番だ――ほら」
そうしてボールを渡される。
「ええっと……」
「ほら、ボールはリングに向かってまっすぐだ――ほら、脇はちゃんと締めろよ」
「はい……!」
彼にシュートフォームを矯正された。
それから何度か挑戦して、失敗したけれど――。
何回か挑戦すると――。
「えいッ……!」
――シュパンッ。
「やった! 綺麗に入りました!」
「よし! やったな!」
二人してハイタッチ。
「すごく嬉しい……! は……!」
「どうした……?」
ぱっと思わず手を離してしまう。
唐突に、今の今まで先輩に身体をたくさん触られていたという事実に思い至って、頬が熱くなっていく。
相手も何か分かったのか、お互いに顔が真っ赤になってしまった。
「ちょっと気を取り直すぞ」
そう言って、瀬戸先輩は自動販売機に走っていったのだった。


