加賀美百合と毎日登下校している。
俺が不用意に彼女に近付いたせいで、他の女生徒に絡まれているからだ。
もちろん、それだけじゃあない。
単純に俺が彼女のそばにいたいのが一番の理由だ。
「さて、早く迎えに行ってやらないとな……」
そんな風に思っていると――。
加賀美百合の教室から、見知った男子の集団が出てくるのが見えた。
「あいつら……」
――ドクンドクン。
心臓の音がどんどん、うるさくなっていく。
別にまだ暑い日でもないのに、汗が流れていって……。
「なん……で……?」
逃げるのはダサい。
そんなことは分かってる。
だけど、柱の陰に隠れて、皆がどこかに行くのを黙って待ってしまった。
気づけば握りしめていた掌には、じっとりと汗が浮かんでいた。
あいつらは……。
……小中学校、ずっと馬鹿みたいに一緒に過ごした、バスケ仲間達。
相変わらず、心臓は落ち着かないで、壊れそうなぐらいおかしな音を立てている。
まさか、加賀美百合に近付いたのだろうか?
そうして、俺がバスケを辞めた理由を言ったりしたんじゃないか……?
まだ彼女に自分からは何も言っていない。
焦りで胸がザワザワざわついて仕方がない。
加賀美百合本人が気づいているのかは分からないが……。
彼女は、ずっと昔から俺のことを推しだって言ってくれている。
だけど……。
もし本当のことを言って……。
加賀美百合に、本当は格好悪い男だってバレるのが怖くて嫌だったんだ。
理由を知れば、あいつも俺から離れるんじゃないか……?
ダサい男を今まで応援してたなんて、ガッカリされるんじゃないかって……。
こんなに高身長でちょっとにらめば皆が怖がるようなやつに育ったのに……。
心の中は臆病なまま、大人になりきれない……。
その時――。
「瀬戸先輩」
ひょっこり、俺の隣に現われたのは、加賀美百合だった。
「ああ……迎えに来たぞ……」
「ありがとうございます」
彼女がふんわりと笑った。
地味メガネなのに……。
俺からすれば、最近は天使に見えて仕方がなくて、さっきとは違うドキドキで落ち着かなくなる。
「あの……先輩にお願いがあるんですけど……」
じーっと彼女が上目遣いで俺を見てきた。
どうしたんだろう……。
やっぱりあいつらが何か言って……。
目立つから、もう迎えに来るなって言われたりしたんだとしたら……。
そう思ったら……。
せっかくここまで仲良くなれたのに……。
あれ?
仲良くなれたんだろうか……?
俺が一方的にこいつと仲良くなったって思ってるだけで……。
勝手に特別扱いしてきて、気持ち悪いとか思われてたら……。
すると――。
「先輩にバスケを教えてもらいたいんです」
――予想外のお願いに、俺は少しだけ動揺したのだった。


