何気なく風呂場のガラス戸を開けたら――。
裸の加賀美百合の姿があった。
完全なミスだ。
慌ててガラス戸を閉めようとしたが――。
俺はその場で固まってしまった。
おいおい、本気かよ……。
地味メガネを外した彼女の姿に愕然としてしまった。
「きゃあああああああああ」
絶叫が浴室内に響き渡った。
『おい! 俺を痴漢か何かと勘違いするなよ……!』
そう抗議しようとした瞬間――。
「って、おい、マジか……!」
おそらく男の裸に免疫がなかったのだろう。
加賀美百合がその場で卒倒してしまった。
風呂場のタイルはわりと堅いので、怪我をしないように支える。
そうして、お姫様抱っこした。
「俺が抱えているのは人形……人形……」
裸の彼女の身体の柔らかさには気づいたら……ダメだ。
フリースローの時ぐらいに集中しようと決意する。
とりあえず加賀美百合の姿を見ないようにして、ベッドに運ぶことにした。
そうして、とにかく視線を下げないようにしながら、俺は思わずぼやいてしまった。
「……しかし、現実にあるんだな……」
小学生の頃に応援してくれた女子が、地味メガネになって、家政婦になって現われて……。
今も推してますって言ってきて……。
まあ見た目は地味になっちまったが、性格が良いところは変わってないし……。
結構悪くないな、なんて思ってたら……。
「メガネ外したら美少女なのは……反則だろ……」
とにかく沸いてくる雑念と煩悩と戦いながら、なんとか加賀美百合の部屋に辿り着くことが出来た。
あとはベッドに下ろすだけ……。
そう思ったら――。
「「あ」」
抱っこしたままの加賀美百合が、ぱっちり目を開けた。
かと思うと、瞳に涙を潤ませはじめる。
……反則級の可愛さの彼女からの不意打ちだ。
今度は叫ばれなかったが……目の前でシクシクしはじめた。
「……うう……もうお嫁にいけない……」
とりあえず、彼女をベッドに下ろして、しばらく黙っていたが……。
「瀬戸先輩がうっかりさんなせいで……うう……ううう……」
「俺のせいかよ……?」
「…………うう……やっぱり、先輩のお世話係は……私には……」
もう嫌だと言いかねない雰囲気だな……。
いや、待て、それは……。
とにかく、俺が困る、色々と……!!
そうして、勢いのまま叫んでしまっていた。
「仕方ねえな……お前が嫁にいけない時は、俺が責任とってやるから!!」
「ふえ……?」
思いがけず、加賀美百合を見下ろしてしまった。
「「あ」」
キョトンとした彼女の全身が真っ赤に色づくのを見てしまった。
って、俺は一体全体何を言って……。
というか、どうしてこいつはタオル巻いてるだけなんだよ……。
言われてみれば、俺もだ。
一応モテる方だけど、健全な男子高校生の俺には色々と刺激が強い……。
「きゃあ、瀬戸先輩! 待って……! まだ私たちは高校生で……! ひゃあっ……? って、あれ……? 先輩、しっかりしてください! 起きてください! 気を失わないで……! 2人とも裸のままなのはまずいです……!」
加賀美百合の身体に覆い被さったまま、俺は気絶してしまった。
翌朝以降――浴室には「使用中」の札を掛けることにした。
そうこうしている内に、大型連休は終わりを告げて――。
そうして、加賀美百合を巻き込んで、またバスケと向き合うことになるとは思いもせずに――。


