「閉じ込められたって、瀬戸先輩ったら大げさなんですから。ここは1階ですし、窓を開けて出たら良いじゃないですか」
アパート暮らしだったので、その感覚で笑って返した。
すると――。
「ここは洋館を改築した家なんだが、防犯がどうとかって言って、窓を改造したんだよ」
「え?」
「掃除してて違和感なかったのか?」
言われて、そう言えば暗かったなと思って窓の方を見る。さっとカーテンを開けた私は、さあっと青くなった。
「え? シャッター?」
「ああ、そうだ。シャッターだ。電動の……」
「電動……」
窓が全部電動だとか、金持ちの家の屋敷は無駄な構造ばかりだ。
「でも、お金持ちだから、防犯はしっかりしないと、マフィアなんかに狙われたりする……」
「マフィア? 相変わらず、お前の考えている内容には着いていけねえな……ああ、それとだ」
「それと……?」
「ここにはまだ電気を通してなかった……だから、窓は開かない」
「え? ええええええっ……!??」
今更ながら、事の重要さに気付いてしまった。
「そ、そんなっ、大丈夫なんでしょうか?」
慌てて瀬戸先輩に問いかけると……。
「まあ、家の中だし、どうにかなるだろう」
「そ、そうですよね……」
出口がなくなってしまうなんて……。
瀬戸先輩と出会ってから、未知の体験ばかりだ。
しかし、どうにかして出る方法を考えないと……。
「ああ、掃除かったるいな……とりあえず寝るわ……」
そう言うと、瀬戸先輩はどっかりとソファに横になって腕を組んで休憩し始めた。
「ちょっと待ってください! 寝ないで、瀬戸先輩!!」
「いや、いいから寝せろよ、この部屋薄暗いから眠いんだって」
そう言って、瞼を閉じて眠りはじめた。
こんな状況でも寝れるなんて……なんてメンタルの強い人なんだろう。
私は彼に近付くと、寝そうになっている彼の胸板をポカポカ叩きはじめた。
「窓もない部屋で、一酸化炭素中毒とかになったらどうするんですか……!?」
「なんも燃やしてねえだろう、ならねえよ……」
「そ、そんな、このまま一生、この部屋から出られなくなったら……」
「出られなくなったら……?」
「事件が起きますよ!!」
「事件? なんだよ、今晩みたいに――」
何か言いかけた瀬戸先輩に、私は返した。
「そうです……! 高校生男女のミイラが洋館で発見!! ……なんて、テレビやWEBニュースのトップに躍り出かねなくって……!」
「ああ、そういう心配かよ……」
心なしかガッカリした雰囲気に見えるのは何なのだろうか。
「先輩の言い分だと、いつ私たち、発見してもらえるかわかりませんよ!!」
「大丈夫だっての……ああ、うるせえな……」
「ひゃっ……」
すると、ソファ横で跪いている私の顎を彼がクイっと掴んできた。
一気に彼の綺麗な顔が私に接近してくる。
(あ……)
心臓がドキドキしてきて落ち着かない。
「なあ、せっかくだ……お前の口を塞いで、黙らせてやるよ」


