瀬戸先輩の部屋の中。
ふわふわのベッドの上で、私はしくしくしていた。
「……ううっ……お、お嫁にいけない……しかも、ボールに間違われてしまうなんて……」
机に備え付けの椅子の上でふんぞり返りながら、瀬戸先輩が告げる。
「別に手を出したとかじゃないから、そんなに気にするなよ。胸や尻を触ったりもしてねえし……」
「せ、先輩は、女の人と一緒に寝るの、慣れてるのかもしれませんが……私は……」
「お前の中で俺はどういう人間になってるんだよ……はあ……まあ、悪かったよ……ソファで寝てたはずなんだが……夜中目覚めて、間違って自分のベッドに入ったみたいだ。今晩は気をつけるから」
「うう……」
謝罪してもらっているのは分かるのだが、瀬戸先輩の態度はデカいし、やっぱりショックは大きい。
「ああ、ほら、お前の推しとかいうのには黙ってやるから、な?」
「そういう問題じゃないんですよ……」
「じゃあ、どういう問題なんだよ……?」
「男女が同じお部屋で夜を明かすなんて……そういうのは、やっぱり付き合ってたりしないと……いいえ、今のは言葉の綾で……ちゃんと結婚してからじゃないと……」
「見た目通り、堅物だな、お前……」
「だって……」
いつの間にか私の近くに来ていた瀬戸先輩が、私の頭をポンポン叩いてきた。
「ほら、グダグダ言ってないで、朝飯食わせてくれよ」
そう言われて一旦涙をひっこめた私は、瀬戸先輩と一緒にリビングに向かうことになった。
その後、私が使用する部屋を案内してもらったのだけれど……。
……まさかの事態が発生するのだった。


