チュンチュン。
外からスズメの鳴き声が聴こえる。
朝だ……。
そういえば、昨日は色々あって、今まで住んでたアパートを出て、それから……。
どうしたんだっけ……?
それにしても、何だか妙に息苦しいのは一体全体何なんだろう……。
だんだん視界がはっきりしてくる。
朝なのに目の前がなんとなく薄暗い。
「むにゅ……」
というか、やっぱり苦しいんだけど……。
何かが身体全体にまとわりついてきているというか……?
ゴソゴソと身体を動かしてみるけど、金縛りみたいに身体が動かない。
なんでかな?
思い切って、体をねじろうとした、その時――。
「……ん……」
――ん?
なんだかどこかで聞いたことがあるような声が……?
その時、私は現在の自分の状況に気付いてしまう。
「ええっ……!?」
なんと、ベッドの上、同じ布団の下、私は瀬戸先輩に抱きしめられていたのだった――!!
一気に恥ずかしくなって、全身が熱くなってしまった。
そう言われてみれば、公園で彼にお姫様抱っこをされて、私はそのまま眠ってしまっていたんだ。
まさか男の人と一緒に一夜を共にしてしまうなんて……!
とにかく抜け出さなきゃ……!
「あ、あの瀬戸先輩……?」
だけど、彼の腕の力が強くてなかなか手ごわかった。
「どうしよう……」
悩んでいたら――ふっと、彼の両腕の力が緩んだ。
「持ちづらいな……」
「え?」
そうして、ガシっと頭の両側をがしっと大きな手に掴まれる。
「このボール……」
ボール!!??
まさかバスケットのボールと勘違いしている!!???
そうして――。
「きゃあああああ、首が捩じれる……! 私はボールじゃありませんからああああ!」
色気のない叫びが、朝の大邸宅に木霊したのだった。


