眠った加賀美百合を抱えたまま、俺は屋敷に帰ってきていた。
だが、さっそく問題が発生していた。
「部屋はたくさんあるが、ベッドが俺の分しかねえな……」
父親の部屋にベッドがもう一台あるにはあった気がするが、確か鍵をしてから海外に向かったはずだ。
「仕方ねえ……こいつを俺のベッドに寝せて、俺はリビングのソファで寝るとするか……」
そうして、自分のベッドの上に、セーラー服姿の彼女を横たえた。
振動で目が覚めないかと思ったが、全くそんな気配はない。
白いシーツの上に1個下の女が寝るとか想像もしてなかったし、高校生の自分にはちょっとだけ刺激が強かった。
「ん……」
彼女の声が漏れ聴こえて、はっとなる。
どうもしばらく見てしまっていたようだ。
彼女が少しだけ身体を捩ると、プリーツスカートが乱れて、細い両太腿が覗く。
なぜだか慌てて、スカートを戻してしまった。
「さすがに靴は脱がせておくか」
そうして、靴はとったけれど、紺色のハイソックスを脱がせるのは、なんとなく気が引けた。
三つ編みはそのままでも良さそうだが、分厚い眼鏡は外してやった方が良さそうな気がして外してやった。
「…………っ」
彼女の顔を見る。
睫毛が長くて、頬はほんのり赤く色づいていた。
少しだけ開いた唇は綺麗なピンク色をしていて、スースーと寝息を立てている。
まだ目を瞑っているが、もしかしたら結構な美少女なんじゃないか……?
なんだか妙に心臓がバクバクして落ち着かない。
「とにかく部屋から出るか……」
気持ちを落ち着けるために、一旦、俺は部屋から出ることにしたのだった。
今にしておけば、外鍵をつけていた方が良かった。
俺は、自分が寝惚けやすいことを忘れて、シャワーも浴びずにソファの上に横たわったのだった。


