3年越しのバレンタイン

「大丈夫!?」

 ぐらっと傾きかけたわたしの体を、誰かが力強い腕で支えてくれた。

「あ、りがとうございま……!!!!」

 心配そうにわたしの顔を覗き込むその人は、まさに四ノ宮くん本人で。

 驚きのあまり、息をするのも忘れたわたしは——

 気付いたら、見知らぬベッドの上に寝かされていた。


「よかった。気が付いたのね」

 ぎぃ、とイスの軋む音とともに、女性の声がする。

「えっと……ここは」

 上半身を起こしながら声の主を探すと、毎朝毎夕見慣れた制服姿の女性が、わたしの方へと歩いてくるのが見えた。

 そっか。ここって——。

「駅の救護室。さっき、クラスメイトだっていう男の子が連れて来てくれたのよ」

「四ノ宮くん……ですか?」

「そうそう。そんな名前だったわね。用事があるからっていって、申し訳なさそうにしながら帰っていったけど。明日、学校で会ったらお礼を言ってあげてね」

 用事……か。

 あのわたしの手紙は、無視されちゃったってこと、だよね。

 考えてみれば、当たり前のこと。

 だって、クラスメイトとはいえ、ほとんど話したことすらないんだから。

 やっぱり、待ち合わせ場所に行かなくてよかった。

 待っても待っても来ない相手を待つなんて、悲しすぎるもん。