「大学入ったらさ、きっと会えなくなっちゃうんだよ? 今気持ち伝えなかったら、永遠にお別れなんだよ!?」

 友だちの吉沢瑠梨ちゃんの言葉が、わたし・笹本佳音の頭の中にまだ響いてる。

 わたし、これでもがんばったんだよ?

 高3のバレンタインの前日、ずっと好きだった四ノ宮樹くんに、『放課後、駅の横のどんぐり公園に来てください』って伝えた。

 なのに……行けなかった。


 もし来なかったらどうしよう。

 迷惑そうな顔をされたらどうしよう。


 そう考えたら、足がすくんだ。

 最後の最後に、意気地なしだったんだ。

 約束の場所に行けなかったわたしは、卒業するまで四ノ宮くんの顔がまともに見れなくなってしまった。

 こんなことになるくらいなら、あんな勇気出さなきゃよかった。

 ただのクラスメイトとして、せめてちゃんとお別れしたかった……。