一人残されたカフェテリアで、ふっと笑いが込み上げる。

「……そりゃ、そうだよね」

私には勢いしかなかった。勢いしか持ち合わせていない。

勢いでもなければ、こんなこと一生言えなかった。

昨日まで、桐谷さんにこんなことを打ち明けようなんて、これっぽっちも思っていなかったんだから――。

――君、誰?

その言葉が、心の中を埋め尽くす。長い間感じることのなかった胸の痛みの予兆に、乾いた笑いさえ消える。

桐谷さんが、私の存在なんかに気に留めるわけがないことも分かっていた。

一年以上、同じチームで働いて来た。それでも、だ。

今頃になって、また激しい鼓動が復活した。その鼓動に痛みまで加わるから、身体全体がキリキリと軋む。

どうやら、”選択肢”を間違えたらしい――。

これが恋愛シミュレーションゲームなら、戻るボタンでシーンを巻き戻し正しい選択肢を選び直せばいい。間違いに気づかずにBADエンドにたどり着いてもリセットボタンを押せばいいし、もしくはまた新しいエンドルートに挑めばいい。

でも、ここは現実世界だ。生身の胸の痛みから逃げ出したくなる。

でも、逃げ出すわけには行かない。

私は、変わりたい。変わらなくちゃいけないのだ。

無理矢理に言い聞かせて、弱い自分をここに留める。

桐谷さんと私の間の、まだ一歩目でしかない。一歩目で退くなんて、間違っている。まだ始まったばかりだ。

――でも、本当は分かっている。

ほとんど可能性は残っていないということ。

確実に心にダメージを負っている。既に、大傷を負っている状態だ。ボロボロの身で、強がりの鎧を身に纏い捨て身で戦場へ乗り込んで行く。

ぐっと握りこぶしを作り、自分を必死に鼓舞する。